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培地分析の基礎と研究応用

[Abstract] 世界に冠たる発酵食品王国である日本は、古くから微生物などの単純な生き物を利用したものづくりを行ってきており、生物の挙動を意のままに操ることによって有用物質を低コストで生産する手法を編み出し、学問体系として確立してきた歴史がある。時は過ぎ21世紀となった今、より複雑で難解な哺乳類細胞(以下「細胞」と呼ぶ)を研究資材として用い、様々な成果が発表されている。用いられている細胞は生物として代謝を行うことによって「恒常性の維持」や「増殖」、「機能の発揮」などを行うため、グルコースに代表される各種栄養成分が必要となるため、細胞を培養する人間はそれらの成分を「培地」として細胞に供給し、細胞が示す種々の反応を観察・評価している。細胞は微生物と異なり、その栄養要求性と代謝経路の複雑さゆえ、培地成分も多岐に渡り、多くの研究者は培地選択や成分に対してあまり深く考察し、研究の対象とすることは少ない。しかし近年、細胞由来の抗体医薬品や、細胞自身を製品とする再生医等製品の登場によって、培地およびその成分選択はコスト、安全性の担保、品質管理という点において重要さを増してきている。また、基礎研究や前臨床研究などの実験分野においても、実験の再現性や安定性を担保するために、細胞培養培地の成分変化を定量的にモニタリングすることは有用であると考えられる。本講演では、細胞培養における培地の歴史と基礎、さらに研究応用例を交えながら培養培地分析に対する基本的な考え方をご紹介する。

堀江正信
京都大学 環境安全保健機構 助教
博士(工学)

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